セカンドノベル ~彼女の夏、15分の記憶~



■基本情報

【製品名】 セカンドノベル ~彼女の夏、15分の記憶~
【対応機種】 PSP
【ジャンル】 青春-自己-探索-ミステリアス-認識-アドベンチャー
【発売日】 2010年7月29日(木)
【価格】 4,980円(税抜)
【CERO】 B(12歳以上対象)
【プレイ人数】 1人
【開発元】 テクスト。
【発売元】 日本一ソフトウェア
【公式サイト】 https://nippon1.jp/consumer/secondnovel/

【プレイ時間】 約26時間





このゲーム、PSstoreにてまとめ買いセール中だったので、『流行り神ポータブル』のついでに買いました。

流行り神シリーズ4本、本作1本の5本合計で3980円ですから、1本あたりおよそ800円で買えたことになります。

日本一ソフトウェアがまとめ買いセールとして売り出すソフトだから、よほど自信があったのでしょう。

それらしいノベルゲームを遊ぶのは割と久しぶりだったのですが、本作には既読スキップや、文字表示ウインドウの非表示などの便利機能が標準搭載されていた、その作りに好印象を抱きました。


ただ、ノベルゲームのキモはあくまでもシナリオです。

どんなにグラフィックや音楽などに力を割いても、肝心のシナリオがおろそか(もしくは陳腐)だと低評価に繋がるのは、近年発売された某ゲームが証明しています。

ましてノベルゲームには戦闘もアクションもないのですから、どうにかしてシナリオでプレイヤーを惹きつけないと、次回作への道筋(開発資金)は作れません。

そういう前提を踏まえた上で本作のクリアレポートを書きます。

 
先にぶっちゃけてしまいますと、このゲームには「奇跡」というものはありません。

主人公の直哉が、高校時代のクラスメートで、恋心を抱いていた彩野と5年ぶりの夏休みに地元で再会するところから物語は始まります。

ただ、彼女は学生時代に、学校の屋上から転落して頭を負傷し、その後遺症で5年前までの記憶しか残っていません。

新しく話をしたとしても、せいぜいその話の記憶を残しておけるのが約15分しかないという、重度の記憶障害を抱えることになってしまっていました。

その「屋上から転落した原因」は何かというと、直哉の友達かつ彩野の幼なじみで、おそらく彩野と両思いであっただろうと目されるユウイチもまた、彼女の転落以前に学校の屋上から落ちて命を落としており、彩野はたぶんユウイチの後追い自殺を図ったのではないか、というのが直哉や周囲の人々の当初の見立てなわけです。

とにかく彩野はその記憶障害のせいで、15分経ったら直哉がなぜ自分の隣にいるのか、という基本的な情報すらもう忘れてしまいますし、その症状が回復するなどという奇跡も絶対に起こりません。

これはネタバレと受け取られても仕方ないかと思いますが、ゲームを遊ぶ前のプロローグの時点でハッキリと断言されていますから、起きないものは起きないんです。


直哉はそんな彼女を連れて、当時通っていた学校に向かいます。

その学校の、彼らが学生生活を送っていた教室に行けば、彩野は当時何が原因でああなったのかを思い出すかも知れないと思ったからです。

事件当時は自殺として処理されたユウイチの死因が、本当に自殺だったとは誰も証明できないので、彼女がかろうじて保っている当時の記憶をたどり、事の真相を突き止めたかったのでしょう。

馴染みのある教室に入った直哉と彩野は当時を懐かしがりますが、彩野は急に何かを思い出し、書くものがほしいと直哉に要請します。

ペンはあったけど肝心の紙がなく、直哉は自分が勤めている会社の名刺を紙にして、彩野の記憶で紡がれたもうひとつの「アヤノ」の物語をあらすじとしてまとめていきます。

果たして、ユウイチが屋上から転落した原因は何だったのか?

彩野は本当にユウイチの後を追いたかったのか?

その謎を解き明かすカギは、彼女に与えられた、たった15分の記憶で作られる「セカンドノベル」だけなのです。


本作は基本的にノベルゲームのような体をとっていますが、選択肢らしい選択肢はそれほど多くありません。

ただし、物語を進めるには名刺の裏に書き留めた「あらすじ」や「キーワード」が重要になり、それらを彩野に読ませることで、さらに新しい記憶を引き出すことが可能となります。

このシステムは『逆転裁判』シリーズの証拠品を「つきつける」に近いものがありますが、仮に読ませるキーワードを誤ったとしても、特にペナルティはありませんし、間違えたらさらにヒントがついてくるので、むしろ親切設計と言えるでしょう。

その名刺を「カード」と呼称していますが、ゲーム中に書き留めるカードの総数は195枚にも及びます。

195枚も名刺を持っていたらポケットはパンパンになると思うのですが、まぁそこは見なかったことにします。


ゲームの流れはこうです。

彩野が「アヤノ」という女子高校生と「ユウイチ」の高校生活を口頭で語っていき、直哉がそれを逐一「あらすじ」としてカードにまとめていきます。

彼女の記憶は15分しか持ちませんので、あらすじを読ませてどこまで話を進めたかを、彼女に理解させる必要があるのです。

そうしないと、また彼女は最初から同じ話を繰り返してしまうのですから。


時にはあらすじに分岐(選択肢)が発生し、それによって物語における各セクションの結末が変わったりします。

アヤノが過ごす高校生活では、アヤノ、ユウイチ、そしてあらゆる怪談やおまじないに詳しい謎の少女、サクラが中心人物として話が進んでいきます。


セカンドノベル ~彼女の夏、15分の記憶~


アヤノはユウイチにテストの点数で負けてハンバーガーをおごることになるとか、プールやプラネタリウムにデートに行くとか、サクラの提案するおまじないや怪談を信じたり信じなかったりして、ユウイチと仲良くなることもあれば、特に何も起こらずセクションが終了したりと、結末はさまざまです。

ここまで読んで勘のいい方なら感づいたと思いますが、このアヤノの物語には、アヤノのクラスメートでユウイチの親友である、直哉は一切登場しないのです。

それはなぜなのでしょうか?

実際の高校生活では彩野、ユウイチ、直哉はいつも3人で仲が良かったにもかかわらず、語られるのはユウイチのことばかり。

さらに言うと、「アヤノ」が過ごしたクラスでは名前も覚えていない友達が登場人物として存在するし、先生の名前も出てきます。

でも直哉だけはナの字も出てこないんです。

この謎は単純に直哉がハブられたとかそういった次元の話ではなく、物語が進み、セクションも終盤に近づくにつれ、じょじょに明らかになっていきます。

果たしてユウイチは何が原因で死んだのか、彩野はなぜユウイチの死後に屋上から飛び降りたのか、サクラという女生徒の目的は何だったのか……。


このゲームを最後まで遊んでみて、自分は「全員が正しく、全員が間違っていた」と思いました。

あまり詳しく書くとネタバレになるので控えますが、物語のキーを握る人物は全員どこかに後ろめたさを感じており、それが「アヤノ」の物語が進むにつれ、意外な形で明らかになっていきます。

良かれと思ってやっていたことが裏目に出てしまうことはままありますが、このゲームはそんな裏目の典型です。

よって正直、エンディングには感動できませんでした。

このゲームはフィクションなれどファンタジーではありませんから、彩野の脳が正常になったり、ユウイチが生き返ったりといった奇跡も起こりません。

真実が詳らかにされることでそこに残るのは、ただただ悲しい、取り返しのつかない結末ばかりです。


でも、そういうストーリーがあってもいいと思います。

死人が蘇生したとか実は生きていたなんてオチは、ゴッドイーターとかなろう小説にでも任せておけばよいのであって、このゲームの目的は「当時、一体何が起こったか」という真相の究明ですから、救いらしい救いがないのも当然なのです。

その真相を知ってなお、彼らはどのように現実と向き合い、生きていくのか?

本作においてもっとも重要なのはそこでありますから、最後まで遊んでバッドエンディングとして受け取るもハッピーエンドと解釈するのも、プレイヤー各々の判断に委ねるしかありません。

確かに死人が出ているのは不幸なことですからハッピーとは言えません。

でも、行き着いた先にはほんのわずかだけど希望の光が差しているのも事実です。

これ以上結末について語るのは無粋だから止めにします。

気になったらゲームショップやPSStoreで買うなりして、ご自身の感性で結末を受け止めてみてください。


余談ですが、このゲームにはおまけ要素があります。

物語が進行するにつれ、脳にまつわるミニ小説が計5冊届きます。

音に色がついているといった特殊な「共感覚」の持ち主の話だとかが、だいたい120ページくらいのボリュームでサクサクと読めます。

ちなみに、ミニ小説を読む際はPSPを「縦」にして、上下左右ボタンでページ送り(戻し)をしたり、しおりを挟んだりできますので、ゲームの進行に詰まった時なんかに、ちょっと気分転換で読んでみるのもいいんじゃないでしょうか。

ただ一つ注意しないといけないのが、このミニ小説はしおりを挟んでも、しおりを挟んだことがオートセーブされませんので、そのつどゲームのプレイデータをセーブして、しおりを挟んだページを記憶させる必要があります。

ここはちょっと不便というかかゆいところに手が届いていませんね、システムデータ(BGM音量やSE、ボイスのONOFF)だけはオートセーブしてくれるだけに、なおさらもどかしさを感じます。


他に気づいた点といえば、ゲームの進行具合が分かりにくいということがまず第一としてあげられます。

例えばPS1版の『かまいたちの夜 特別篇』の場合、まだ通過していないルートがフローチャートになって一覧できますので、次に読み進めたい部分が分かりやすくて助かります。

ですが本作の場合は、進行に詰まった場合、Fragmentモード(あらすじ作成モード)で、すでにあらすじ作成が済んだ場面まで一旦戻し「彩野にカードを見せる場面」にさかのぼり、どの場面のあらすじ(もしくはキーワード)カードが欠けているのかをチェックするしかないわけです。

記憶力のいい人なら物語をどこまで戻すべきか思い出せるのかも知れませんが、さすがに全195枚あるカードのどこが欠けていて、どこで新たな分岐が発生するのかを頭の中で整理して導き出すのは自分には不可能でした。

ただ攻略サイトを読むのは何か負けた気分になるので、あくまで自力で全部やり遂げましたが、ここがもうちょっと親切だったら、プレイ時間はもう少し短くなっていたと思います。


本作のキャラクターデザインはPixivでもご活躍のイラストレーターもりちかさん、ミニ小説の挿絵にはいとうのいぢさんなどが担当されています。

声優さんには疎いのであまり語ることがありませんが、サクラさんの某シーンでの声がとても可愛らしかったです。

なお、主人公の直哉はボイスをOFFにして進めるのがデフォルトのように扱われていますが、クライマックスになったら、たぶんONにしたくなること請け合いです。


最後に。

本作はたまたまセールだったので約800円で買えましたが、個人的には800円以上の価値がある良作だと感じました。

イラストのタッチは優しく、シナリオもよく練られており、ゲームオーバーが決してネガティブなことばかりではないことも好印象です。

本編の出来もさることながら、PSPでミニ小説を読むという新しい(?)試みもありますので、寝る前のちょっとした時間に少しずつ読んでいくのもいいでしょう。

自分はまだ1冊分しか読んでいませんので、次のゲームを遊ぶまでは、しばらくミニ小説を読みつつゲームクリアの余韻に浸ろうかと思っています。








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